「復刻本にあたり」メッセージ

みなさま、お久しぶりでございます。
漫画家の「鍛治明香」改め「かじさやか」でございます。
初版平成七年のこの「止利仏師ものがたり」の漫画を描かせていただきました。30近い時を経て、この度、飛騨市河合振興事務所様のお力で復刻する運びとなり作者として大変嬉しく、また一方で当時の拙き絵柄などをみるに少々恥ずかしい気もしております。
復刻の労をとって頂いた柏木様をはじめ、飛騨市河合振興事務所の皆様に深くお礼を申し上げます。
当時の私は結婚、妊娠、出産、子育てとまさに作中のトリの母、忍のような状態でした。取材のために4ヶ月の娘を背負って天生高原まで登山(ハイキング?)もしたんですよ。その当時は皆さんにとても暖かく接していただいたのを今でも思い出します。本当にありがたかったです。改めてお礼を言わせて下さいありがとうございました。
さて一晩泊まり、朝起きて窓を開けると山から降りてくるのは清涼な空気。
ああこれだ、これが何かを作り出す力になるんだ。きっとトリも、飛騨の匠と呼ばれる人々にとっても。そう想って見上げた山はきっと今も変わらずにそこにあるのでしょう。
霊峰の山懐深き場所で育った鞍作首止利。
再び出会えたこの機会を生かし近いうちに彼の子孫たちの冒険活劇を描こうと準備しています。
いつかどこかでお目にかかれたら嬉しゅうございます。

令和五年 師走 札幌の自宅にて

かじ さやか